この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
「結局のところ、|危険を冒して過去に来てまで、何を伝えようとしていたのか?《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・》、という疑問に収束する。客観的に見て、息子アーベル贔屓だと言われてしまえばそれまでだが、未来の私が過去に来る事を許しているんだ。アーベルの所持していた鍵束は、現在の私の持っているものと同じ物。未来の私は、このタイミングで16歳のアーベルが来ることを分かっているのだろう。未来の私が息子を危険にさせてまで無駄な事はしないはずだ」


 それは私も同意見。アーベルを危ない目に合わせてまで、過去に行かせるなんて事をしない。自分の中でそれだけは揺らがないって分かっている。分かっているからこそ、アーベルが来た理由を優先させてしまう。

 客観的に見たら確たる証拠なんて無い。無いけれど、私自身が子供にそんな事をさせないと信じているから。


「アーベルが来たから、最悪の未来は回避出来ている……。いや……、未来のアーベルが来なければ、この先の未来を変えられないのだろう」


 私の普段の思考からすると、そう考えるのが自然だ、とローデリヒ様は続けた。ローデリヒ様も同じことを思っていたようで、ちょっとホッとする。
 ローデリヒ様はアーベルの額に手を当て、キラキラと輝く海色の瞳を覗き込んだ。


「なあ、アーベル。何を知っているんだ?」
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