この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 対する国王は腰を落としたまま、エーレンフリートに向き合う。光の剣は輝きを失うことない。
 エーレンフリートは僅かに片目を眇めて、苛立たしげに呟く。

「近衛騎士団の正規の剣でも全然持たねえ。……ほんっとに……」

 そして、叫んだ。

「ど〜やって勝てってんだよ?!こんなデブ無理じゃね〜か!!」
「ええい!駄々をこねるでない!!気が抜けるじゃろが!!そして、デブ関係なくない?!」

 場の空気を一気に緩ませた2人だったが、その場の流れを作っているのもまた、2人だった。
 国王は追撃せずに喚く。

「……ワシは人の事ハゲデブジジイとか悪く言うような子に育てた覚えはない!!ワシはちょっとだけ、ほんのちょっっっっとだけ、ふくよかなだけなんじゃ!!悪い子にはお尻ペンペンの刑じゃ!!」

 髪の毛を掻き上げ、エーレンフリートは国王を睨み付ける。
 口元に酷薄な笑みを浮かべた。

「てめぇ……、育てられた覚えもねぇし、まず鏡で自分の事見た方がいんじゃね〜の?」

 ヒビが入ったままの剣を正面に構える。

「……オレが脂肪落としてやろうか?!なぁ?!」

 国王の剣を握る手に力が籠る。それは誰にも気付かない程度の小さな変化。

「――それは御免じゃ!!」
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