「ねぇ、シェアしない?」
授業もまったく耳に入らない。
休み時間になると、体を硬くして身構えたけど、安奈がなにかを仕掛けてくることはなかった。
それはきっと、隣のクラスの達実が遊びに来るからだ。
意味深な視線も、今日ばかりはやめてほしい。
安奈の怒りを買うだけだ。それだけじゃない。他の女子が私を見る目にも、蔑んだものが含まれている。
「気にしちゃだめだよ」
舞香だけが唯一、そばに寄り添って励ましてくれた。
彩音は休み時間もどこかに行ってしまう。
きっと怒ってるんだ、私が達実と付き合っていることを隠していたから。
親友なら、打ち明けるべきだったかもしれない。
もうどうせ遅いけど__。
「優子、食べないの?」
お昼休み、舞香と机を合わせてお弁当をシェアするけど、今日は食欲がない。まだ舞香が一緒にいてくれるだけで、救われた思いがした。
「フルーツだったらどう?甘いし。ねっ?」
いちごを刺したフォークを受け取る。
心配してくれる心遣いが嬉しくて、私はいちごを口の中に__。
「豚、なに食ってんだよ」
手を叩(はた)かれ、いちごがすっ飛んでいく。
「ちょっと!」
と、果敢にも立ち上がった舞香の手を、私は慌てて掴んだ。
「いいから」
「良くないって、こんなの!」
そう言って安奈を睨む舞香の前に、私は立ち塞がった。