喪失姫と眠り王子




「そう言って貰えると、わしは嬉しいです」







「みな、力を透に送るのじゃ。そうすればあやつにも勝てる」








妖たちは己の力を透に送る。






てからは紐のようなものが出てくる。







その紐が透の背中と繋がり透の体力はどんどん増えていく。








「いくぞ!」





手のひらから、青色の炎が出て、烏に命中する。





また、持っていた刀と炎を上手く使い切っていく。







反応速度も悪くはなく、皆が倒したと思ったとき。







『それだけか』








無傷の烏が煙の中から現れた。







「はぁ?さっき切ったはず」







『あー、それはアイツじゃろ』







指の先には血だらけになったほかの烏が寝転がっていた。








「おまえ!仲間を見殺しにしたのか」







『なかま?あいつらは仲間じゃない。俺のためにしぬヤツらだ』







「っ、許さん」








同じ攻撃を何度も繰り返すが烏には傷一つつかない。






むしろ透の方が烏に痛めつけられている。










「っ、もう見てられん。透!妾と代わるのだ!」







「うっ、ダメだ」








「なぜ?」







「今度は俺が守る」







「っ。透……!龍!!透を助けて」








『わ、ワシが?』








「そう!あんたなら出来るだろ」








『できないことは無いが……まー契約してるんだからいいか』












龍は、血だらけで力尽きている透の中に入っていった。






強い光と痛み、そして叫び声が聞こえ皆目を瞑ってしまった。







数秒後目を開くと目の前にいるのは、いつもと違う透の姿だった。






白い着物に水色で模様が書かれており、ラメで鱗が表現されている。





髪の毛は長くなりグレー色。










「ま、まさか。憑依した!」







『そのまさかだ。透、思いどうりに使うがいい』







「分かった」








力はさっきよりも数倍強くなりスピードも早くなった。







目付きが変わり、目が合うだけでも鳥肌が立つ。






『なっ、龍!裏切ったな』







「裏切る?元々お前と契約してねーだろ」





『その通り。お前みたいなクズと誰が契約するか』








「おしゃべりはそこまで。お前はもう終わりだ。」






その声とともに炎を帯びた刀が烏の腹部に刺さった。



















戦いは終わった。







多くの死傷者がでたが、烏属は滅亡した。






鬼輝は、王としての仕事を再開させた。










まず、傷だらけになっているもの達を鬼輝の力で直し、街の建物を復旧させた。







もし残っている烏属がいたらその場で連行する法律を作り、町中の妖に食料を分け与えた。








「キキ。良かった」







「ん?記憶が戻って?」






「そう、一時はどうなるかと」






「まー。結果オーライ」











「キキーー!」






「悠介?どうしたの?」







「透さまが、倒れました」








「「えっ!」」











治療部屋に向かうと、布団の中で苦しそうに透が寝込んでいた。









「なんで!さっき治療してあげたはず」








「はい。私にもさっぱりわかりません。でもこれだけは分かります。もう長くないと」






「っ!どういうこと!」








「それは」









『わしとの契約だよ』







「龍」







『そいつはお前を守りたがっていた。だから、俺との契約でこいつの寿命と引き換えに力をあげたんだ』







「なんでそんな馬鹿なことを……」








みんなの目には大粒の涙が溜まっていた。











『悩んでいたぞ……ソナタを守れなかったと』






「つ、どうにかならないの」







『それは無理だ。契約だからな』








「じゃぁ、私の寿命あげるから」







「それは行けません!王が居なくなれば私達はもう終わりです」








「じゃぁ、どぉしろって言うの!」








『一つだけ、お前が透にあることをしてやるんだ。』







「あることって?」








『それは言えない。殺しはしないからそれを見つけろ。そしたら今までどうりに戻してやる』














その日から、鬼輝の日常は変わって行った。








そして、透は目を開けることはなかった。

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