喪失姫と眠り王子


翌日、眩しい外の光が障子の隙間から差し込む。






少し肌寒さを感じながら朝食の準備をした。








昨日取れた魚から出しを取り出し、お味噌汁にし、塩焼きにする。







庭でかわれていたニワトリの卵を目玉焼きにする。








蝉が鳴き出す頃、今朝見た夢を思い出した。







それはぼやけてはっきりは分からなかったものの、綺麗な着物に包まれた少女が誰かと戦っている夢だった。






辺りは真っ暗で不気味だった。







地面にはたくさんの黒いモヤがかかっていた。







少女の周りには大勢の人間でないものが集まっていた。






仲間なのだろう。








ココ最近そのような夢を頻繁に見る。







もしかして、その少女は私なのかもしれない。









「キキ!早く準備して!」







「あ、うん。ボーってしてた」








「はやくはやく」







今から海に泳ぎに行く。





海の水が透き通って綺麗だと地元の人には人気だそうだ。




日が暮れるまで遊び尽くし、昨日のことなんてすっかり忘れていた。





夕日がおりてくる頃、集団の人達が近づいてきた。








「心花さん!」






「心音さんもいる!桃音さん、朴さんもも!」







「あっ……キキさん」





「?どちら様?」






「そうですよね。俺たちのことなんて覚えてないですよね」






「ごめんなさい」







「いえいえ。」







肩を落としながらその集団は帰っていった。






楽しいはずの旅行がやけに楽しくない。







何故だろうか。








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