先生の全部、俺で埋めてあげる。



先生を見つけた瞬間音が消える。


風が先生の髪を揺らしていて、初めて会った時と同じように俺の心臓は高鳴った。


何年ぶりかに見る先生は、やっぱりきれいで。


一瞬にして俺の全部を持って行く。




先生はお墓の前で手を合わせて、お墓に向かって何か喋っているようだった。


その姿に、いろんな感情の渦が巻く。




先生を久しぶりに見ることができて嬉しくて仕方ない気持ちと。


今は亡き先生の恋人に、嫉妬する気持ちと。


俺は先生には頑なに受け入れてもらえない、というもどかしい気持ち。


そして好きな人が亡くなって辛い思いをしている先生の気持ちも痛い程よく分かる。



< 276 / 338 >

この作品をシェア

pagetop