桝田くんは痛みを知らない
「カステラ……!」


 傍に寄らなくても、わかる。

 大好きなお菓子のパッケージだから。


「古都ちゃん好きだったよね、それ」

「すごく!!」

「最近、夜遅くまで勉強してるんだって?」


 なんで知ってるの?

 さては、お母さんが言ったな。


「よかったら夜食にどうぞ」


 時計を見ると、現在の時刻――21時すぎ。


 食べたい。

 猛烈に、食べたいけれど。


「今食たべたら太るから、明日の朝にいただくね」

「そう? 古都ちゃん細いから。気にしなくていいのに」


 細くはないよ……!!


「ほら。頭使うと糖分欲しくなるっていうし」

「それは、ある」

「成績あげたいんだ?」

「あ……、うん。もっと頑張らなきゃなって」
< 139 / 300 >

この作品をシェア

pagetop