桝田くんは痛みを知らない
 タクシーで病院に向かっているとき。


 ――俺のいうことが聞けねーのかよ


 何度も、桝田くんのことを思い浮かべて、ドキドキした。


 ――それ以上バカになったらどーすんの 


 あんなことを言っていたけど、心配してくれていた。


 ――どけ


 ヤザワくんのこと、すごく怖い顔で睨みつけていたのに。


 わたしのこと。


 ――だったらはやく鞄、とってこい


 優しい目で、見てくれた。


 ――――嫌われて、なかった。


 桝田くんとの間に感じた溝は、ゼロになった。 
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