芦名くんの隠しごと





「……っ、は?」


「若槻ん()の病院の特別患者室っつーとこで、今も昏睡状態だけどな」


「「え」」


楓さんも藍ちゃんも知らなかったのか、ふたり揃って目を丸くしていた。


「……いや、お前らは知っとけよ」


「だってウチ、親父と顔合わせることだって滅多にないから」


「……お袋さんは、」


「死んでるし」



───あ、

ウチと逆だ。



「へえ、共通点見つけた」



そう言って花瀬くんは、少しだけ口角を上げた。

けれどすぐに、月森に向き直って、彼の頬に拳を入れた。



「……っ痛」


「芦名がヘラヘラしてるからって、勝手に誤解したまま憎んで。芦名は怒らないから俺が代わりに怒ってんだよ。お前、あいつが死んだと思い込んだショックで、ろくに調べようともしなかっただろ」


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