海賊と宝石の歌姫
「船長様!」

痛みに耐えるセダの耳に、カヤの悲鳴に似た声が届く。

しかし、カヤのことを考える間もなくグレンが剣を振り下ろす。セダはそれを横に転がって避けた。

また立ち上がり、セダは剣を握りしめる。グレンは余裕の笑みを浮かべていた。

「どうした?もう息が荒くなっているぞ?」

挑発に乗ってはならない。セダは心の中で繰り返す。ヤケになって体力を消耗してしまえばこちらの負けだ。カヤを奪われてしまう。

カヤを奪われることだけは、セダは避けたかった。ハナダの宝はどうでもよかった。ただカヤがそばにいてくれるだけでいい。カヤを奪われるなど、セダにとって耐えられないことだった。

セダは荒くなった呼吸を整え、息を大きく吐く。そして、グレンに向かって走り剣をまた振り下ろした。

キン、キン、と互いの剣が交わる音が響く。船員たちは手を出すことなく黙ってセダとグレンの戦いを見ていた。

戦いの時間は長くなっていき、グレンの呼吸も荒くなっていく。
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