海賊と宝石の歌姫
カヤの方からセダに話しかけてくることはなかった。それが嬉しく、セダは微笑みながらドアを開ける。

紫のリボンがついたロングワンピースを着たカヤは、目をあちこちに動かしている。

「とりあえず入れ。話をしたいと俺も思っていた」

セダは優しく言い、カヤを部屋に入れる。カヤに椅子を勧め、セダもカヤの前に腰掛けた。

「昼間のことでお話が……」

カヤはゆっくりと口を開ける。その目はどこか不安げだった。セダは、カヤの小さな手に自分の手を重ねる。

「大丈夫だ。俺は、お前をどこかへ売ったりはしない。お前の嫌がることももうしない。……だから、聞きたいんだ。昼間のことを」

セダがそう微笑むと、カヤは覚悟を決めたようで話し始める。

「私が住んでいた村は、フジ族という民族が暮らす村です。そのフジ族は、不思議な力が使えます。……昼間の私の歌のように」

セダは酒場で聞いた話を思い出す。あの話は本当だったのだ。カヤの力を目の当たりにしたため、否定などできない。
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