愛染堂市
 
『・・アンタが横流しした物って事か?』


「お、流石はヤマモト、良い勘してるな」


『・・アンタ、つくづく呆れた野郎だな』


「そんな珍しい事じゃねぇだろ?・・・自衛隊なんて、支給品を横に流す奴だっているんだぜ」


『そんな事、俺の知った事じゃねえし・・・その銃は警察の手中にあるんだろ?俺に話すような事じゃねえだろ?』


「まぁまぁヤマモト、最後まで聞けよ。・・・俺だって、内々に解決出来るならそうするんだがな・・・最近は庁内の管理も厳しくてな、何かあると直ぐに監察が出てくるんだわ」


『それこそ知らねえよ!!身から出た錆だろ?精々、言い逃れの理由でも考えてくれ』


「・・・それがな、今回の件に関しては大丈夫なんだよ」


『はぁ?!ますます分からねえ!!一体俺に何の用なんだよ?!』


俺は、内容の見えない話と木村自身に苛立ち、自然と声を荒げる。


「今回の銃はシリアルは内部までしっかりと削ってある銃だから、出所がバレる心配は無えし、なんぼでも言い逃れは出来るんだよ・・・ただしな・・」


木村は深くソファーに座り直し、また勿体ぶるようにコーヒーをすする。


「俺が流したスミス&ウェッソンはもう一丁あるんだよ」


『そいつだってシリアルは削ってあるんだろ?』


「・・いや、それがもう一丁は削ってねえんだよ」

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