愛染堂市
―――――傭兵



 黒人が白い歯を剥き出しにして、暑苦しい笑顔を俺に向ける。

俺は煙草を一本取り出し火を点ける。

風も無く、煙はすうっと立ち上り、茅葺きの安直な屋根に吸い込まれる。

安っぽいペンキの塗られた、カウンターの端に見たことの無いメーカーの安っぽいテレビが無造作に置かれている。

テレビは壊れたように何度も、革命派の軍が前議会の『何たら族』の議員を処刑する様子を放映する。

―――正直うんざりする

民族革命だか何だか知らないが、俺からしてみたら、若い黒人が年寄りの黒人の首を切り落としてるだけの映像だ。

大体にして、肌の色どころか、宗教も言語も違わない人種同士が、過去の部族のしがらみに縛られて殺し合ってる様を、喜々と放映し、それを喜んで観ているこの国が気色悪い。


『ハイネケン』


テレビに顔を向けている俺に、頑なに暑苦しい笑顔で注文を待つ黒人に、俺は溜め息のように言い放つ。

黒人は、歯を出したまま何度か頷き、カウンターの下の冷蔵庫をガラガラと漁る。

カウンターの向かい側で、稼ぎの良さそうな黒人が、山間部の中国人が内職で作っていそうなパラソルを差したカクテルを、ストローで飲んでいる。

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