私の中におっさん(魔王)がいる。~黒田の章~

 * * *

 翌日クロちゃんが出勤する少し前に、翼さんがやってきた。
 クロちゃんは物凄く嫌そうな顔をしたけど、翼さんはお構いなしに元気良く挨拶をしていた。

 クロちゃんがシンディを連れて、そのままさっさと行こうとするので、翼さんは慌てて、私に包みに入った入国証を手渡して、すでに歩き出していたクロちゃんの後を急いで追って行った。

 私はその二人の光景がやけに微笑ましく感じて、朝からにやにやしてしまった。
 包みの中の物は、ひし形の木の板に【美章国――王都凛章――ゆり】と、彫られている物だった。
 ゆりの部分が青色で、美章国は黒。王都凛章の部分が金色で塗られている。

「これが入国証かぁ……」

 私はまじまじと入国証を見つめる。これで、行動範囲が広げられる。嬉しさのあまり駆け出したい気分だった。
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