私の中におっさん(魔王)がいる。~風間の章~

 * * *


 私達は携帯食で朝食をすますと、歩き出した。
 しばらく森の中を行くと、砂利道が木々の間から覗いた。あきらかに人が作った風景にほっと息をつく。
 風間さんは即座に地図を広げた。地図を凝視して、不意に眉間にシワを寄せる。

「どうしました?」
「いえ……」

 言葉を濁して、風間さんはまた地図に目を向ける。何かを考えた後、私を見据えた。

「申し訳ありません。やはりこの地図にはこの道が載っていないようです」
「え!?」

 慌てて地図を覗く。
 地理の教科書と比べると、この地図はおそまつもいいとこだった。
 おそらく、大通りしか書いてない。

「ええ……なんで、こんなに大雑把?」

 つい、ぽろっと愚痴が出る。

「地図は他の国でもだいたいこんなものですよ」
「え? そうなんですか?」

 風間さんは当然というように頷いた。

「精巧な地図は、敵に攻め込まれたときにやっかいですから。地理は重要な情報のひとつです」

 そうなんだ……。でも、ちょっと分かるかも。歴史でも地形を利用して勝ったとかって聞いたことあるし。

「でも、じゃあ、どっちに進んだらいいんでしょう?」
「太陽がこちら側にありますから、左側でしょう」

 太陽?
 私は空を見上げた。右側の木々の間から薄っすらと太陽が覗く。左はまだ薄青い。私は昨日傾いてきた 太陽を見ながら進んでいたことを思い出した。

「太陽は東から上がるから、反対方向に進めば良いんですね」
「そういうことです」

 にこりと笑って、風間さんは歩き出した。私はその後に続く。
 それにしても、相変わらず歩くの速いってば。




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