私の中におっさん(魔王)がいる。~風間の章~

 差し出すようにして見せたのは、サイズ違いの長袖のチャイナ服に、カルサンやニッカポッカに似たズボンが二着ずつ。
 それと、サイズ違いの中華靴だ。

「靴は履いてみてください」

 靴を受け取って、風間さんが私に差し出した。
 靴を脱いで履き替え、つま先をトントンと叩いて、少し歩いてみた。

「大丈夫そうです」
「そうですか。ではこれで」

 風間さんが店主に向かい合うと、店主は私達を促すように手を反らした。

「では奥にて着替えを」

 奥へと進むと、箪笥が壁沿いにずらっと置いてあった。一つの箪笥の前に中年の女性がいて、服をしまっていた。
どうやら、ここに売り物の服が入ってるみたいだ。

 壁沿いの箪笥の列が切れた所に、人一人が入れるくらいの窪んだスペースがあった。そこに店主が棒を突っ込んで、大きな布をかける。
 
「お先にどうぞ」

 風間さんが笑んで、スペースの方に手をやって促した。
(更衣室だったんだ)
 私は小さく頷いて、更衣室へと入った。

 棒の位置が目線より若干下で、風間さんと店主が見える。
(なんかちょっと、緊張するんですけど)
 私はちょっとだけドキドキしながら、服に着替えた。着ていた制服を持ってカーテン代わりの布をめくる。

「お似合いですよ」

 お世辞をどうもありがとう。私は店主にぺこりと頭を下げる。すると、風間さんが微笑んだ。

「本当に、可愛らしいですよ」

(う、嬉しい! ――いや、イカン、イカン!)
 私は思わず高鳴った胸を押さえつけて、首を横にブンブンと振った。

「ありがとうございます」

 頭を下げると、風間さんはにこりと笑った。

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