恋の駆け引き~イケメンDr.は新人秘書を手放せない~
ボスのご両親は2人ともドクター。
いつも忙しくて、家事はお手伝いさんがしていたらしい。
お袋の味は?って聞いた私に、記憶がないと答えた。
なんだか寂しいなあと思ったけれど、ボス自身はそんなに気にしている様子はなく、

「お袋は欲張りだから、いつも時間がなかったんだよ」
って笑っていた。

確かに、ボスのお母様は大学病院の勤務医で、皆川総合病院の院長夫人。
その上3人の子供をみんな医学部に行かせた立派な母。
どこかで手を抜かないと、体がいくつあっても足りなかったと思う。

「家事をしないからって手を抜いていたわけじゃないぞ。どんなに忙しくても学校行事には顔を出していたし、時間があれば俺たちと一緒にいてくれた」

ふーん。
「お母様のこと、好きなんですね」
ポロッと口を出てしまった。

「馬鹿」
照れくさそうにしたボスが、コツンと私のおでこを小突いた。
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