恋の駆け引き~イケメンDr.は新人秘書を手放せない~
その日の夕方。

私は一人で秘書課ミーティングの準備をしていた。

「あれ、今日も並木さん?」
ちょっと不満そうな課長の声。
「まあ、新人ですから」
どうしても雑用は私に回ってくる。
「それだけじゃないでしょう」
まあ、そうですね。

私の性格がそうさせるのかもしれません。
自業自得です。

「並木くん」
近くの椅子に座った課長が私を呼ぶ。
「はい」
手を止めて振り返ると、その表情が厳しくてちょっと背筋が伸びた。

「前にも言ったよね。自分の気持ちをはっきり言いなさいって」
確かに言われた。
でも、これが私の性格だから。

「今はまだ新人だから困らないかもしれないけれど、この先後輩が入ってきてチームをまとめるような立場になったときに、自分が我慢すればそれでいいなんて考えでいたら仕事は回らないよ。みんな、言いたくて苦言を言うわけではないんだ。社会人として主張すべきことはきちんと言いなさい」
「はい」
課長に説教されるのなんて初めてかも。
いつも、どちらかというとかばってもらっていたから。

ボスとの同居を解消したら、もっと仕事を頑張ろう。
先輩秘書さんたちがどんなに意地悪でも、課長の下でなら頑張れる。
それに、ボスのいるこの病院で働いていたいから。
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