素直になれたら
6.不思議な時間
○同・自由席車内(夜)

がらがらの車内。
心菜は窓際。相田は通路側に座っている。
相田はスマホを操作しながら、

相田「広島に着くのが20時半ぐらいだな。21時過ぎに名古屋行きの新幹線があるから、帰ろうと思えば帰れるけど・・・名古屋着が23時半くらいだから、在来線が動いてるかわかんねえな。それでも帰りたいならUターンするし、もし広島に一泊するなら、ホテル代はオレが出す。どっちでもいい。おまえが選べ」

心菜「は、はあ・・・」

心菜(うーん・・・。この時間にUターンで名古屋は厳しいよね。
確かに、在来線の終電もうなくなってそうだし・・・。
とはいえ、広島でまた相田さんともう一泊?
・・・まあ、もちろん一部屋づつ取ってくれるだろうけど・・・それってかなり、お金かかるよね・・・。

「私が出す」って言ったところで、相田さんは絶対に自分が出すって言うだろう。
あの落ち込みようを見ると、アラームがセットされていなかった責任を感じているのだと思う。

「大丈夫」って言われてすっかり任せちゃった私も非がある気がするけれど、それをあんまり言っちゃうと、相田さんに任せなければよかったって、頼りないみたいで余計に傷つける気がしちゃうよね・・・)

悩む心菜。
「ちょっとすみません」と言ってスマホを出して操作する。

心菜(うん・・・。いいよね、こういうので)

心菜、相田にスマホ画面を見せる。
広島駅周辺の、ネットカフェの検索画面。

心菜「もし泊まるなら、ホテルだと高いし、私はネットカフェで大丈夫です。駅の近くにもあるみたいですよ」

相田は、心菜のスマホ画面を覗く。
無言で考え込んだ後、自分のスマホを取り出し操作する。
   
相田「・・・調べた。少し歩くけどここにするか。全室カードキーで完全個室。女性専用エリアもある。シャワー完備。フリードリンク、モーニング無料」

相田、心菜に「ニューオープン!」と書かれたネットカフェのHPを見せる。
心菜は、ぱっと目を輝かせる。

心菜「わ、いいですね!漫画5万冊以上あるって!ここにしましょう!!」

楽しそうな心菜。
相田は吹き出す。

相田「なんだ。漫画好きなのか」

心菜「はい。大好きです」

相田「・・・じゃあ、決まりだな」

心菜「はい」

嬉しそうに、自分のスマホでネットカフェのHPを見る心菜。   
相田はほっとしたような顔で、心菜の横顔を見る。






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