一夜からはじまる恋
夕方5時になり社員は会社の大きなホールに集められた。
入り口で名前を記入してうちわを預かる。そのうちわは男性社員は青のうちわ。女性社員は赤のうちわ。
「え?青ですか?」
樹は受付係の職員に声をかける。
「あっすみません。名前の漢字で男性かと思って。」
「女です。」
樹がそう告げると隣の受付のやり取りが聞こえた。
「本当に申し訳ありません!!」
思わず樹が隣に視線を移すと受付係がすらりと背の高いスーツの男性に頭を下げていた。
「まさか、社長のお名前とは思わず、漢字で女性と勘違いしてしまって。」
この人が社長か・・・。思ったより若い。というか同じくらいの年齢?髪は少し茶色がかっていて細身の長身。どんな対応をするか樹が見ていると
「よく間違えられるんです。名前が紛らわしいですよね。大丈夫です。あかで。」
低音の心地よい声で語り掛ける社長は悪い人には見えなかった。
< 3 / 349 >

この作品をシェア

pagetop