人生の楽しみ方
早いランチを食べて、二人で手を繋ぎながら歩いて帰る。俺達は大人なのに、それが正しい行為だと自然に思う。君はたまに俺を見つめながら微笑む。

 「ひな、少し抑えて?」

 「無理だよ。幸せなんだもん。」

 恥ずかしい反面、君の素直な反応はとても好感が持てる。すれ違う人も幸せな気持ちにさせる様な。それは君の持って生まれた美徳なんだろう。

 「私、今日はもう死んでもいい。」

 あんまり自然な調子で君は言うけど、その単語に驚く。

 「ひなは死なない。俺はひなが死ぬなんて想像もしたくない。」

 「でも、死ぬよ。」

 「え?」

 「人はいつか死ぬよ。」

 君は自然に死を解釈しているみたいだった。

 「ひな。」

 「いつか死ぬから、後悔しない様に生きるの。好きな人に好きって言うの。」

 その潔い言い方。

 「そんな深い覚悟で俺を好きになってくれているの?」

 君は少し唇を尖らせて顔を背ける。そして小さな声で言ってくれた。

 「望さんが好き。望さんに会ってから、私は少しだけ元気になったの。」

 俺は嬉しくて嬉しくて。君の心が少しだけ近付いてくれたから。

 「だったら俺も死んでもいい。ひなが大好き。」

 これが君の世界。自然に受け入れ、自然に愛する世界。海でも教えてくれた。ただ、そこにいる。そういう世界。君の隣に居る事を許されたくて、俺は君の手を強く握った。
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