人生の楽しみ方
 君を駅まで送ってから、俺は独りで歩きながら考える。君が変わってるのは、生い立ちとこれまでの仕事のせいだろう。君はきっと自分で失敗して、考えて、結論を出してきた。そう、独創性に富んでいる。

 「とんでもない人を好きになっちゃったな。」

 静かに呟く。でも、きっと君を逃したら次は無いから。君が弱っている時に漬け込むのは本当に卑怯だと想う。それでも、君が欲しかった。君に同棲を持ち掛けて、そのまま結婚して。そして専業主婦になる事を君は望むだろうか。いや、きっと望まないだろう。でも、俺は今の君が好きになってしまったのだから。

 「ひな。」

 家には君の置いていった化粧品と、香りが残っていた。君に寝巻き代わりに貸したTシャツを胸に抱いて香りを吸い込む。

 「きっと君を手に入れるから。」

 君の香りのするベッドで俺は幸せな気持ちで眠りについた。
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