ポンコツ女子、異世界でのんびり仕立屋はじめます
「そのくらいの使い方なら、もう時効だよ。ふたりは使いたいときに自分で使えたんだね」

 クラレットもセピアも、アッシュと違って器用なタイプだし、恋愛にも積極的だからコントロールもしやすかったのだろう。

「うん……。ごめん僕、ケイトに使ったこともあるんだ。最初に出会ったときとか……」

「あたしも。男装したときにちょっと……。出来心だったのよ」

「あのときの甘い匂い、やっぱり気のせいじゃなかったんだね!?」

 本当にごめん、とふたりに平謝りされる。あのあといやらしい夢を見たりして大変だったのに。

 あのときの誘惑するようなふたりの態度を思い出し、ため息をつく。

「もういいよ、実際の被害はなかったんだし……」

「ごめんなさい。もうだれかに対して使ったりしないわ」

「僕もそうするよ」

 プロポーズと、アッシュへの恋心を自覚した話をして、私の一夜の物語は幕を閉じた。

「まあ、あなたがアッシュを好きなことは気付いていたけどね」

 と、クラレットがあっさり言う。

「僕も気付いていたよ。気付いていなかったのはアッシュくらいじゃないの?」

 とセピアも。

「そんなに私、バレバレだった?」

「けっこうね。だから新年のお祭りでふたりきりにしたり、今回もペアになるように画策していたのにさ」

 セピアは私のことが好きだったはずなのに、なぜそんなことを?と思ったのだが、さすがにずうずうしすぎて自分からは言えない。もしかして、もうすでに昔のことになっているのだろうか。

 そんな私の姿を見て、セピアはにやっと笑った。

「だって、ケイトとアッシュが恋人同士になってくれれば、ケイトは帰らずにいてくれるでしょう? 時間があるなら僕のほうが有利だよね。アッシュより僕のほうが気が利くし、女性を喜ばせるのは上手いんだから。ケイトがアッシュに愛想を尽かせたときがチャンスだと思ってさ」

 まるで、いたずらを計画するような口調だった。
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