【番外編 完】愛を知らない彼
逃げ出す心 〜千花〜
不安な気持ちを抱えたまま、二人の部屋へ向かった。

数日前までは、あんなに幸せな気持ちだったのに、マンションが見えてくると足が止まりがちになる。


エントランスが見えてくると、なにやら話をしている男女の姿が見えてきた。


康介さんと……園田さん!?


なにを話しているのかはわからない。
戸惑いながら見ていると……

えっ?

園田さんが康介さんに抱きついた。
完全に足が進まなくなった。

やっぱり、園田さんが本当の婚約者だったんだ。
私は今日、別れを告げられるんだ。

溢れる涙を止められなかった。
2人の姿を見ていたくない一心で、今来た道を駆け出した。

「千花!!」

康介さんの呼ぶ声が聞こえたけど、振り返らず、ただひたすら走り続けた。
これが答えなんだ。
私は邪魔者でしかない。
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