【番外編 完】愛を知らない彼
番外編
「あれ?千花?」

園児が帰った後、職員室に戻る途中で声をかけられた。

「えっ……」

声がした方に目を向けると、懐かしい人がいた。

「卓弘さん?」

学生時代のアルバイトで出会った元彼がいた。

「久しぶりだね。元気にしてた?」

「うん」

「そっか。千花はちゃんと自分の夢を叶えたんだね」

そう言いながら、卓弘さんは園舎を見上げた。

「そうだよ。卒業してから、この園で働いてるの」

「そうなんだ」

「卓弘さんは?今日はどうしてここに?」

「今は所属部署が変わって、こうやって幼稚園や学校をまわってるんだ」

「そうたったんだ」


「千花、その指輪は……?」

そう言って、私の左手にはめられた指輪を見た。

「私、結婚したんだ」

「そうだったんだ。おめでとう」

「ありがとう」



「本当は、付き合っていたあの頃、千花のことは僕が幸せにするんだと、ずっと思っていた」

「卓弘さん?」
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