お願いだから、俺だけのものになって
(☆奏多side)

俺は何で
オードブルを売っていた美紅に
惹かれたんだろう・・・



自分から女の子に
声をかけたことなんて
一度もなかったのに・・・




俺は今日
女の子3人とカラオケで
クリスマスパーティーをした




その帰り
女の子たちを
駅まで送っていくときに

凍てつくような寒さの中
ぽつんと立っている
あのマッチ売りの少女を見つけた




「オードブル いかかですか?」




幸せオーラのカップル達は
彼女に気にも留めず
通り過ぎている



「あれじゃ
 オードブルなんて売れないよな・・・」



そんなことを考えていると



「かー君、早く行こうよ!」



と一人の女の子が
俺に腕を絡めてきた



「愛子ずる~い 私も」



「私も
 かー君にくっつきたいのに」



『まぁ 俺には関係ないし・・・

 女の子とは楽しく過ごせれば
 それでいいし・・・』



「ごめん、ごめん、行こっか」



俺もその場を通り過ぎた





女の子たちを駅に送り届け

イルミネーションが
キラキラまぶしい商店街を
また戻って家に向かっていると

暗い顔で
ぼーっとカップルを見つめている
あの子がいた



『あの子 
 まだオードブル売ってるじゃん』



テーブルの上のオードブルは
さっき通った時から
全く減っていない



『俺には関係ない 

 俺には関係ない』



そう心の中で唱え
また俺はその子の前を
素通りした




それなのに
なぜかエプロン姿で
オードブルを売っている彼女のことが
無性に気になる



俺はお弁当屋の
斜め向かいの本屋に入り

雑誌を立ち読みしながら
その子をチラチラ見ていた



あまりに寒いのか
手をこすりながら
その場にしゃがみ込んでいた



『なんかあの子
 マッチ売りの少女みたいだな・・・』



フフっと笑いがこみあげてきて
俺は何も考えず
彼女の元に走っていた

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