溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を
37話「危険な旦那様」





   37話「危険な旦那様」




 

  ☆☆☆



 花の香りがする。
 とても懐かしい、香りだ。
 この香りに包まれる時は、幸せだった。そんな気がしていた。

 いつまでもここで眠っていたい。
 花霞はそんな風に思って、夢を見ない眠りについていた。

 目を覚ましてしまえば、怖いことがある。悲しいことがある。そんな気がしてしまい、目を開けるのが怖かった。


 けれど、不意に肩に温かさを感じて、花霞はゆっくりと目を開けてしまう。突然の眩しい光で、周りの様子を伺えない。



 「会いに来てくれたの?……嬉しいけど、ここは君が今来る場所ではないよ。」
 「…………そうなの?」
 「あぁ………でも、君にお礼を言いたかったからちょうどいいかな。ありがとう。」
 「え………。」
 「いつも祈ってくれて。そして、あの人を守ってくれて。」
 「あの人………。」
 「君が愛してる人だよ。さぁ、思い出して帰るんだ。そして、幸せになって。」



 優しく触れられて肩は寝ていたはずの花霞の体をふわりと浮かせた。

 今の人は誰なのだろうか。
 知っているはずなのに、顔は眩しすぎて見ることが出来ない。けれど、彼がきっと優しい人なのは何となくだが、わかった。

 

 「あの人って誰?」
 「次に目を覚ましたらわかるよ。心配しないで………彼は君が大好きだから。」
 「…………待って………!わからないよ。怖いよ…………。」
 「あの人に伝えて。カッコいい警察官になって見せてって。」
 「え……………。」


 必死に手を伸ばしたけれど、どんどん離れていく。
 一瞬だけ、その人の口元が見えた。
 優しく微笑んで、「いってらっしゃい。」と、言ったように花霞は思った。





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