薬指に愛の印を
月島せとかが彼と初めて出会ったのは、大学一年生の時だった。

「オメル・アブドーラくん。エジプトから留学をしに来たんだ。仲良くしてあげてくれ」

そう教授に紹介され、せとかはオメルを見つめる。クーフィーヤと呼ばれるエジプトの民族衣装を着た凛としたアンバーの目をした男性。せとかは初めて見る留学生の姿に、一目で興味を持った。

「こんにちは!エジプトって暑い国なの?」

早速せとかはオメルに話しかけてみる。しかし、オメルは日本語がわからないようで、困ったように首を傾げている。

「えっと……」

せとかはスマホの電源を入れる。そして、アラビア語の挨拶を調べた。

「アッサラーム・アライクム!(こんにちは!)」

そうせとかが言うと、オメルも「アッサラーム・アライクム(こんにちは)」と返してくれた。しかし、その顔に笑顔はない。

「……えっとぉ〜……」

こんにちは、以外何も話してくれないオメルを見て、せとかは慌てて言葉をアラビア語に翻訳してもらう。そして、それをオメルに見せた。
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