月夜に花が咲く頃に
ゆっくりと立ち上がって、座り込んだままの小田巻の前に立つ。


小田巻は、拳銃を床に落として、がっくりとうなだれた。


「・・・・・・なんで、お前、死ぬのが怖くねえのかよ」


「何バカなこと言ってんだ。死ぬことが怖くないわけないだろう」


「じゃあ、なんであんな迷いなく前に出れるんだよ?死ぬかもしれなかったんだぞ」


やれやれ、殺そうとした奴が言うことじゃないなあ。


あまりの矛盾に、呆れてしまう。


「死ぬかもなんて、あんな状態で考える余裕なかったよ。まあでも多分、そんなことよりも、あのバカを失いたくなかったから」


後ろにいる紅雅をチラリと見て、笑う。


紅雅は何を話しているか聞こえないらしく、目が合うと眉間にしわを作った。


「はっ、んだよそれ・・・・・・。死ぬことより怖いことがあんのかよ」


「あるんだよ」


真っ直ぐに小田巻の目を見つめる。


「あんたも、そういう奴が見つかるといいね」


小田巻は、ふい、と目をそらした。


「俺にそんな奴、いるわけねえだろ」


バカだねえ。


気づいてないだけで、意外と近くにいるもんなのに。


ほら、とりあえずあそこに一人。


ずっとお前を見てきた奴が、いるだろ?


奈桐と目が合う。


奈桐は私に小さく頭を下げてから、小田巻のところまで走ってきた。


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