月夜に花が咲く頃に
7.別れ

紅雅のバイクに乗って連れてこられたのは暁が普段お世話になってるという病院だった。


中に入ると、分厚い眼鏡をかけた白衣のおじいさんが近寄ってきた。




「おお紅雅。今日は女の子と一緒か?」


「ああ。こいつが雫だ」


「なんじゃ、見つかったのか、浩の妹」



ここでは、私はヒロ兄の妹と認識されているらしい。


おじいさんは私ににっこりと笑いかけて、ぺこりと頭を下げた。



「雫ちゃん、わしは浩の担当医の萩野(はぎの)じゃ。よく来たのう」


「ヒロ兄の・・・・・・。霜北雫です。今日は急に来てしまってすみません」


「いやいや、紅雅がずっと雫ちゃんを探してたからのう。見つかってよかったわい」



それから萩野さんは、ヒロ兄の病室まで案内してくれた。



「もう、2年になるのう。未だに目覚める気配もないが・・・・・・」



白い壁に、白いベッド。



そこに、ヒロ兄は横たわっていた。



「ひ、ろ、兄・・・・・・」



その眠る顔は、間違いなくヒロ兄で。


2年ぶりに見たその顔は、少し大人びているようにも見えた。



「やっと、会えたね。ヒロ兄・・・・・・」



声をかけても、返事はない。



目が開くこともない。




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