月夜に花が咲く頃に
一瞬心を読まれたのかとびっくりしたけど、ただ奥山がぽつりとつぶやいただけだったらしい。


その顔は、すごく寂しそう。


「俺らも一応ここら辺をまとめてるからさ、たまに街を視察に行くこともあるんだけど、なかなかね」


責任、なのだろうか。


人の上に立つものとしての、重圧。


高校生のくせに、重いもの背負ってるんだな。


「まあ、あんたらがいなかったらもっとやばい街だったのかもね」


「え?」


確かにこの街は、治安は悪い方だけど、それなりに統一はされている。


暁にたてつくようなやつはほとんどいないし、犯罪が起こる前にそのほとんどが阻止されてるのも知ってる。


「あんたらがいるから、この街の住み心地、悪くないよ。少なくとも私はね」


だからありがと、と笑って言うと、奥山は少し驚いたような顔をしてから照れたように笑った。





「じゃあ、送ってくれてありがと」


家の近くのコンビニに着いて、私は車を降りる。


例に漏れずガクさんがまたドアを開けてくれた。


「ガクさんも、ありがと」


「いえいえ、気をつけて帰ってくださいっす」


コンビニから去って行く車に一礼して、私は自分の家に向かった。


それにしてもずいぶん濃い一日だったなあ。





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