月夜に花が咲く頃に
そんな、今時お化けとか、いるわけないし。


気のせい、だよね?


・・・・・・怖い。やばい、めちゃくちゃ怖い。



私は小走りになって、でもなんか後ろからやっぱりなにか近づいてきている気がして。



不意にがっと肩を掴まれた。




「いやああぁああああああ!!!」










「うるせえ」



「・・・・・・へ、?」




聞き覚えのある声に、ジタバタと動かしていた手足を止める。


そこにいたのは、怪訝そうな顔をした紅雅だった。



「な、なん、で、く、くう、が、お、おば、け、」


「何言ってるか分かんねえよ」



紅雅の顔を恐る恐る触る。


指先には確かに人の体温を感じて、ようやく目の前にいるのが本物の紅雅だと確信した。



「び、びっくり、した・・・・・・」



安心したはいいものの、身体の震えが止まらない。



力が抜けて、へたりと座り込んでしまった。



「きゅ、急に、あらわれない、でよ。ほんとに、死ぬかと思った・・・・・・」



がくがくと震える私に、紅雅は何も言わない。



なんか言えよ、ちくしょう。



こんなことで怖がって、なんて、馬鹿にしてんのか?



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