月夜に花が咲く頃に
倉庫について紙束を奥にしまっていると、女の子がぽそりとつぶやいた。


「・・・・・・どうして雫さんみたいな人が、あんな人と一緒に、」


「え・・・・・・?」


よく聞こえなくて女の子の方を見ると、女の子はぎゅっと拳をにぎって叫んだ。


「だって!雫さんはこんな優しくて、私みたいな人にも、こうやって普通に話しかけてくれるのに・・・・・・!なのになんで、あんなギャルみたいな、」


翼のこと、だろうか。


あの子もなかなか誤解されやすいからなあ。


「あんな人、雫さんの隣にふさわしくない!あんな、どうせいつも男にこび売ってるような、汚い女!」


私の動きが止まる。


女の子の叫びは、止まらない。


「あんな人雫さんにふさわしくない!」


女の子が私の手を取って訴えてくる。


でも、その手は冷たかった。


「・・・・・・離して、くれるかな」


いや、私の手が冷たいのかな。


なんかもう、分かんないや。


「し、雫、さん・・・・・・?」


「たしかに翼は見た目あんなだけど、君が思ってるような人じゃないよ」


今、私どんな顔をしてるんだろう。


いい顔ではないんだろう。


女の子が怯えた顔して、後ずさってる。


「まあ、私のことも、翼のことも、君がどう思うかは自由だけどさ」



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