日替わり彼氏


寺本さんの言う通り、私はなにも罰せられることはなかった。


先生のことも、大輔のことも、弥恵のことも、日替わり彼氏そのものも正直に話したというのに。


「本当に何から何までありがとうございます」


退院の日、お母さんが寺本さんに頭を下げる。


どういうわけか、両親は寺本さんのことを全面的に信頼していた。


今回のことで、弁護士を立てたりと守ってくれたからかもしれない。


先生のときとは違い、彼氏だと寺本さんが名乗っても嫌な顔ひとつしなかったんだ。


学校は頃合いを見て転校することになった。


私としても、あの学校に通う勇気はない。


「なにもかも忘れるのよ」とお母さんが釘をさす。


「うん」


頷いたけど、忘れるなんて無理だ。


忘れるなんて__。


「気晴らしにどっか行かない?」


寺本さんは、忙しい仕事の合間を縫ってよく会いに来てくれた。


あんまり気乗りしないけど、ずっと断り続けるのも悪くて。


ドライブに行くことになった。


「なんか、懐かしいね?」


おそらく、日替わり彼女でデートした日のことを言っているんだろう。


もう、ずっと昔のことのように思える。


私だけ、生き残ってしまったような。


< 132 / 142 >

この作品をシェア

pagetop