日替わり彼氏
「それは災難だったね」
教室に入ると、弥恵がいたわってくれた。
まだお尻が痛い。
それなのに『ぶっ殺す!』とか、なくない?
「坂口には関わっちゃだめだって」
「ほんと、マジで腹立つ」
腹立つけれど、怖いのも事実。
隣のクラスの坂口は、見るからにヤンキーで喧嘩っ早い。まだぶつかっただけで済んだから、良かったのかも。
ていうか、お前こそ日替わり男子に入れよって話。入って女子の気持ちを勉強しろ!
気分を変えるため、真司くんのことを思い出す。
昨日までは、もう拓也でいいって思ってたけど、どうしよう?
この後のデート次第では、分からない。
イメケン度合いで言うと、真司くんのほうが上かな。
大人な感じは拓也だけど。
究極の二択かも。
そんなことを考えていると、ヤンキー坂口との不快な出来事は頭から綺麗さっぱり消え去り、あっという間に放課後になった。
急いで校舎を出ると、校門あたりで人だかりができている。
まさか__?
私が近づいていくと、ひょっこりと真司くんが顔を出した。
「智ちゃん!」と、手を引かれる感じは、連れ去られるお姫様のようで。
ちょっと気分がいいかも。
ちゃんと恋人繋ぎだし。