日替わり彼氏


「それは災難だったね」


教室に入ると、弥恵がいたわってくれた。


まだお尻が痛い。


それなのに『ぶっ殺す!』とか、なくない?


「坂口には関わっちゃだめだって」


「ほんと、マジで腹立つ」


腹立つけれど、怖いのも事実。


隣のクラスの坂口は、見るからにヤンキーで喧嘩っ早い。まだぶつかっただけで済んだから、良かったのかも。


ていうか、お前こそ日替わり男子に入れよって話。入って女子の気持ちを勉強しろ!


気分を変えるため、真司くんのことを思い出す。


昨日までは、もう拓也でいいって思ってたけど、どうしよう?


この後のデート次第では、分からない。


イメケン度合いで言うと、真司くんのほうが上かな。


大人な感じは拓也だけど。


究極の二択かも。


そんなことを考えていると、ヤンキー坂口との不快な出来事は頭から綺麗さっぱり消え去り、あっという間に放課後になった。


急いで校舎を出ると、校門あたりで人だかりができている。


まさか__?


私が近づいていくと、ひょっこりと真司くんが顔を出した。


「智ちゃん!」と、手を引かれる感じは、連れ去られるお姫様のようで。


ちょっと気分がいいかも。


ちゃんと恋人繋ぎだし。


< 23 / 142 >

この作品をシェア

pagetop