日替わり彼氏


「柏木智花」


「はーい」


名前を呼ばれて、三井先生の元に向かう。


今日は数学のテストが返ってくる日。


私は数学だけは、頑張って勉強している。先生に褒められたいがために。


「どうした、柏木。らしくないな」


冷たく言われ、テストを突き返された。


点数は45点。


そういや、日替わり彼氏のことで頭がいっぱいでテスト勉強ができなかった。


ああ、きっと、先生に軽蔑されちゃったな。


それから授業が始まっても、憂鬱な気分は消えてくれない。


チラッと先生と目が合うけど、視線はとても冷たい。


なんだか泣きたくなってきた。


チャイムが鳴り、私は大きなため息をつく。


そのとき「柏木、ちょっといいか?」と先生に呼ばれた。


いつもならどきっと胸が高鳴るけど、今日ばかりは違う。


きっと怒られるんだろう。


だって、私に喋りかけることなく、ずんずんと廊下を歩いていく後ろ姿は、明らかに怒っている。


「ちょっとここで待ってろ」


職員室の前で待たされ、再び出てきた先生の後をついていくと、そこは美術室だった。


「次の授業で使われないらしい」と、私を招き入れた先生は、後ろ手に鍵を閉める。


こてんぱんに叱られるのか。


そう思って身構えていると__。


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