堕天使
これから。
目の前に広がっているのは海。

車を出た瞬間に愛菜の髪の毛は風によってぼっさぼさになった。

「何で海?」

場所を特定して予想していたわけじゃないが金持ちの樹のことだからもっとロマンチックな場所でも行くのかと愛菜は思っていた。

「今の貴女には良い場所かなと思いまして」

「…もしかして、顔腫れているから?」

まだまだ、すさまじく寒い海辺には人の姿はなくて。遠くのほうに犬をつれたおじいさんが歩いているだけだった。


樹は黙って海の方へ歩いて行く。愛菜は「待って」と樹を追いかける。

こういうところが樹の身勝手なところだなぁと愛菜は思う。少なくともマコトは愛菜に合わせて待っていてくれる。

砂浜を歩いて、海の方へ行くと樹が立ち止まる。

久しぶりの波の音と。海面が太陽の光できらきらと輝いている。
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