俺の手には負えない

 退社の後、九条に連絡を入れて、マンション前で落ち合った。

 一緒にマンションに入り、引っ越しの段取りも考えてもらった。

 新しいマンションも既にいくつかリサーチしてくれていて、落ち着いて話してみると、こちらのことをよく考えてくれていることが分かる。

 こういう、おんぶにだっこの状態は好きではないが、かといって今は、引っ越しの手伝いを頼めるような、いざという時連絡すればすぐ来てくれるような友達はいない。

 巽とは全く連絡を取っていない。

 友人である四対とも時々メールするくらいに控えている。記憶が戻ったことをメールで話した時、会おうと言われた。だけど、その時は忙しかったし、あまり、会いたくはなかったし。

 結局、佐伯もどうなったのか知らない。

 つまり、新しい自分の道が開けたわけだが、それでも自分の味方になってくれているのは宮下しかいないわけで。

 もし、そのうち宮下が店舗からいなくなったら本社で仕事をしようかとも一瞬考えた。だけどそれはきっとまだ先の話しだし、今はとりあえず引っ越しをして、九条参与と話をしていくしかない。

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