間宮さんのニセ花嫁【完】

初めの契約を覚えていますか?



新婚旅行から気が付けばもう一ヶ月近く経っていた。11月になり、すっかり辺りの空気は冷たくなって人恋しくなりはじめる、そんな季節。


「飛鳥、今年は誕生日どうする?」

「誕生日?」

「ちょっと、自分の誕生日忘れないでよ」


午後の勤務前、弥生の言葉にハッとする。そうだ、今月の末は私の誕生日だった。年末にかけて仕事も忙しくなるから毎年頭から抜けがちなのを弥生はいつも思い出させてくれる。
彼女が「今年も飛鳥の家でお祝いする?」と提案するとそれを聞いていたのか、柳下くんがクスリと喉を鳴らした。


「今年もって、去年佐々本さん彼氏いたのに当日祝ってたんですか?」

「そんなわけないから。去年は当日は彼氏に譲ってたっての」

「じゃあ今年は当日祝えるじゃないですか」


今年の誕生日は週末の金曜日だからそれは全然大丈夫だけれど。だけど一つだけ問題なのが……


「その、今年私の家はちょっと」

「え、駄目?」

「う、うん……」


駄目というか、あの部屋は引っ越してしまったから呼べないし、今暮らしているところといえば間宮さんの実家だし。


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