間宮さんのニセ花嫁【完】
お昼の営業周りから帰ってくるとたまたま廊下で間宮さんの姿を見つける。
見事に擦れ違った女性がみんな振り返って彼の姿に見惚れている。この中に間宮さんと結婚したいっていう女性は何人いるんだろう。
「(間宮さんの為ならどれだけ厳しい稽古も頑張ります!、ていう子多いと思うけど、そういう子を選んだ方が確実だったんじゃ……)」
部下の私の方が頼みやすかった、ってことなのかな。
「佐々本、おかえり。外暑かっただろ」
「暑かったですよ〜! 本当夏の営業は地獄ですね!」
「はは、だな」
「途中道に迷っちゃって大変だったんですよ〜」
帰り道だったから良かったものの、これが行きだったら約束の時間に遅れていたのでちゃんと確認してから会社を出なければ。
同情するような視線を向ける間宮さんに私は「でも!」と気持ちを持ち直す。
「そのお陰で途中、すっごくお洒落なカフェ見つけたんです! また今度弥生と行こうと思います!」
「……そうか、良かったな」
「はい!」
すると彼は「ポジティブシンキングというやつだな」と笑ってくれたので昨日の記憶とリンクする。
あぁ、月曜日になると全てがリセットされたみたいで現実味がなかったけど、土日の二日間を間宮さんと過ごしたのって夢じゃなかったんだな。
彼は周りに人が少ないことを確認すると小さな声で語り掛けた。
「疲れが溜まってないか心配してたんだが、まぁ元気そうなら良かった」
「うっ、まぁ空元気というものです。右手が筋肉痛で痛くて、キーボード打つのも辛いです」
「そうか……本当に悪いな」
「いやいや! 間宮さんのせいじゃないので!」
というか最早誰のせいにしていいか分からない。話の流れでこうなってしまったのだから。
それに私も彼にお願いしたいことがあるのでその分も頑張らなくてはいけないのであった。