新婚蜜愛~一途な外科医とお見合い結婚いたします~

「弄んではいないと言いたいのですか? そうですね。弄ぶつもりならば、せめて話せるようになってからにしてほしいものです」

 長い指先が、ツツツッと私の唇をなぞる。
 それだけで、昨晩も感じた疼きが背中に走る。

 ギュッと彼の服をつかむと、彼はため息を吐いた。

「とにかく眠りましょう。まだ夜も深い。よく寝ても、それでも話せない時は、その時に考えましょう」

 私は彼が自分の部屋に行ってしまわないように、今一度、服をギュッとつかむ。

「あなたが離れて眠りたいのでしょう?」

 不満を漏らすように言われても、反論できない。
『あなた』と呼ぶ彼とは、どこか距離があるようで寂しく感じる。

 私は彼の手を取って自分の頬に当てる。
 大きな手は、私の頬をすっぽりと包んだ。

「あまりかわいい行動をしないでください。明日、話せなかったら責任を取ります」

 なにをどう責任を取るのか、答えはもらえるわけもなく、彼は軽く唇を触れ合わせた。

「寝ますよ。自分がこんなにも堪え性がないとは知らなかった」

 ぼやくように呟いた彼に、思わず笑みを漏らすと抱き寄せられた。

「笑ってもらえたのなら、いいことにします」

 そう言って目を閉じた省吾さんに倣って、私も目を閉じた。

 彼の腕の中、ぬくもりを感じながら眠る。
 想像よりもずっと安心して、すぐに眠りに落ちていた。

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