しずくの恋
その翌日…


ものすごく沈んだ気持ちで学校に向かった。


「おはよっ!あれ、しずく?
せっかくの潜入なのに、暗い顔してどうしたの?」



「……興奮しすぎて本当に一睡もできなかった」



「うそ?!」



「本当なの…。こうなったら眠らないぞって決めたのに

明け方ウトウトしちゃって…

寄りかかったクッションの模様がほっぺたに移っちゃった。

目の下のクマも…ひどくて、泣きたい…」


「もともとが美肌だから全然わからないって。
それにしても、興奮しすぎだよ…」


「興奮しないでいるほうが無理だよ~」



流山くんの通ってる道場に参加できる
せっかくの機会なのに……

目の下のクマはひどいし、
しっかりパックしたのに、いつもに比べて肌はガサついてるし、

ほっぺたにはクッションの跡が残ってるし…

もう泣きたい……


「まあまあ、この世の終わり〜みたいな顔しないで!

流山だって稽古してるんだろうし、
さすがに目の下のクマまでは気がつかないんじゃない?

ほっぺたのクッション跡なんて、
放課後まで残らないだろうし!

それより、昨日、館長って人から連絡があって、

道場に通ってる高校生は男子ばっかりなんだって。

馴染みにくいだろうから
ひとり経験者の女のコを呼んでくれるって」


「へー、その子、流山のこと知ってるかもしれないね!

その子に流山のこと聞いてみたら?」


「そうだよ!流山の情報収集、趣味でしょ?」


「そ、そっか」


でも、もう緊張しすぎて、

杏ちゃんの話も琴ちゃんの声も半分くらいしか
頭に入ってこなかった。



その日は一日中、放課後まであと何時間あるかをカウントしていた。



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