晴れた日に降る雨のように
「そう言えばさ、矢野が結婚するらしいぞ」
そんな私の気持ちなど、知る由も無いのだろう彼は、私に当り前のように視線をむける。

「え?噓。さっきそんな事言ってた?」

私はさっきの飲み会の事を思い出しながら、さりげなく視線を外した。

「さっき聞いた」

「おめでたいね」

祐樹と同じく、一緒の時期にサークルに入った友人の幸せな報告に私も嬉しくなる。

「飲みの場で言えばいいのにな?祝ってやりたかったのに」

そんな友人の事を思って話す祐樹に、私も同意する。

「相手は?早いよね」

大学を出てそんなに年数がたっていない上に、不毛な片思い継続中の私にとって結婚は夢のような話だ。

「5つ年上。それがまたみんなに冷やかされると思ったみたいだな。そんなことないのに」

少し複雑な気持ちを乗せたような、祐樹の言葉に、私はクスリと笑いながら地雷を踏んだ。

「祐樹だって、その立場だったいわなかったんじゃないの?結婚……」

自ら好きな相手に結婚の話を振るなんて、自爆しにいくようなものなのに。

言った事を後悔しても、その言葉を取り消すことなどできない事に私は視線をさまよわせた。
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