琥珀の中の一等星
 そのような青色のほかに、まったく違う色であれば色相的に真逆にあたるオレンジも、髪色とアクセサリー、それぞれを引き立ててくれる色であったりする。
 オレンジ色。さっき少し、思い出してしまった『想い出の花』の色でもある。
 リゲルはオレンジ色が好きだった。だから幼いライラもオレンジ色のお花、と目星をつけて摘んだのであろうが。
 彼の瞳もオレンジ色に近い。濃いオレンジ色というよりは、もう少し黄味を帯びた、琥珀のような色。まるで宝石か星のようで、ライラはその色がとても好きだった。
 だからかもしれない。使い慣れた青のアクセサリーを見るほかに、オレンジ色にもつい目をやってしまうのは。
 その琥珀色の瞳は、実のところ最近あまり見られないのだけど。
 なんだか目を見つめるのは恥ずかしい。そこから自分の気持ちが流れていってしまいそうで。
 顔は合わせるものの、目を覗き込むなんてもう出来ない。
 自分の気持ちは知られたくなかった。想う気持ちは確かにあるのに。そういう、想い合う仲になれたらいいな、という望みはあるのに。
 でも言ってしまう気はあまりなかった。傍にいると楽しいし、話していてもそうだし、幼馴染としてでも特別に扱ってくれるのは嬉しい。
 それでも。
 そういう……彼に恋人という存在になってほしいと望む気持ちについて考えると、少しだけ、ほんの少しだけさみしい気持ちが生まれてしまう。
 だって、彼は。
 思い出しかけて、ライラは軽く首を振った。こんなこと、考えても仕方がない。
 髪も綺麗に整えられたのでブラシをしまう。代わりにひとつの引き出しからノートを出した。毎晩つけている日記帳である。
 デスクに向かって、小さなライトをつける。丸みを帯びたライトから零れるひかりもオレンジ色。
 今日はなにを書こうかしら。思ったものの、やはり夜の『お客様』についてだろう。
 母を手伝って、カモ肉のパイ包みやほかの料理を作ったこと。
 訪ねてきて、美味しいと料理を食べてくれて、そして楽しく話してくれたリゲルのこと。
 甘酸っぱかったブルーベリー。
 そのようなことを書き連ねていく。その日のぶんとしている一ページを越してしまいそうになって、ライラはなんだかおかしくなってしまった。
 だって、楽しいひとときだったから。
 無理やり「良い一日でした」というようなことを書いて、日記を〆て。ぱたりとノートを閉じる。
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