花のようなる愛しいあなた
2月。
大仏再興プロジェクトは着々と進んでいる。

大仏は7年前焼けてしまった二代目と同じく銅製で作ることになった。
しかし前回よりも大きなサイズで作る。
その後大仏殿を建てる。
それだけでは不十分なので、梵鐘を作ろうということで話はまとまった。

概要がまとまったところで、次は設計図が必要となる。
大工棟梁の中井は片桐の屋敷に泊まり込み、大坂城の調査をはじめた。
本丸や二の丸、西の丸をはじめとして、天守閣やら櫓など綿密に調査し始めた。

勿論プライベート部分である秀頼たちの居住部分や女性たちが住まう奥の間やは立ち入りを禁じたが、「知らないでうっかり」迷い込むこともあるかもしれない。
秀頼はプライベートゾーンに入られないよう家臣たちだけでなく侍女たちにも言って聞かせ監視を徹底させた。
しかし秀頼が監視を命じるまでもなく、余所者が城内をメモして回る様子はイヤでも目についた。
特に縄張りやら堀の様子までメモされた日には皆苛立ちが抑えられない。
怒り心頭の家臣や下男・下女までもが連日逐一秀頼や周りの者に報告してくれるお陰で中井の行動は手に取るように把握できた。
大坂城には他の城よりもずっと多くの隠し通路や扉がある。
それに気づかれたらその道はもう使うことができない。
重成や大野治房や渡辺糺は絵図を中井の行動を照らし合わせて確認して行った。


約一月後、大仏再建の大まかな設計図が出来上がった。
今度は資材の調達が必要になる。
「材料費はケチらないこと。
質が良いものを使うように!」
片桐は渋ったが淀殿と秀頼の強い意向に従うこととなった。
文官たちは資材をどこからどのようにいつまでにどこに調達するか計画を立てる。
次は資材である銅や上に重ね塗る金、建築に使う木材やらを取り扱う商人たちが出入りするようになった。
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