花のようなる愛しいあなた

◇宴◇

「いやぁ、それにしても立派になられて!」
「俺、秀頼様が赤子だった頃”馬”になってあげたんですよ?覚えてます?」
大名たちは思い出話に花を咲かせ、秀頼の未来に期待してどんどん酒が進んだ。

秀頼の成人を皆が喜び、輝かしい未来を思ってテンションが上がっている時、一人だけ反対する者がいた。
淀殿だった。
「それはダメよ!!!」
「…え…?」
「上洛するなんて、絶対ダメ!!!」
一同は静まり返った。
淀殿が言うには、外は危ないからと言う事だった。
「そんなの俺が守ってやるから」
福島正則は食い下がる。
「あんたは信用できない」
淀殿はピシャリと言う。
「はっ!!!!!?
俺は豊臣家を裏切るような真似はしてないぜ!
俺の命は豊臣家と共にある!
ここまで豊臣のことを考えてる奴なんて俺の他いないぜ!?」
「福島さんね、あんたは頭が足りないのよ。
騙され巧く利用されるのがオチ。
関ヶ原が良い例じゃないの!」

関ケ原の戦いのとき、福島は家康と共に上杉討伐へと向かっていた途中に石田三成が背後から攻めて来たとの報せを受けた。
普段から石田と対立することの多かった福島は迷うことなく「引き返して石田を討つぞ!」と立ち上がり先鋒を務めた。
それが引き金となり徳川軍はモチベーションが爆あがりして石田軍を見事討ち果たした。
しかしその後勢力を強めた家康が天下を我物にし独占支配を始めてしまうことは、当時の福島には考えもつかなかった。
「結局あんたの失敗が秀頼様を危ない目に遭わせるのよ!
そんなことにも気付いていない訳!?」
「てめぇにそこまで言われる筋合いはねぇよ!!!」
図星を突かれ、福島は頭に血が上る。
「偉そうにしてるけど、秀頼様がいなければ、お前なんかただの側女だからな!
チヤホヤしてやってんのが俺たちの情けだって気付かねぇバカはそっちなんだよ!!!」
「何ですってぇぇぇ!!!?」
淀殿が暴れ始めて食器などを投げ始める。
「このヒステリー女め!!!」
酔っぱらった福島が暴れたら大変なことになるので加藤清正が水をぶっかけて取り押さえる。
「頭を冷やせ、市松(いちまつ)(福島正紀の幼名)!!」
大変な騒ぎとなった。
「あぁもう、やれやれ…」
大野治長と浅野幸長が淀殿を何とかなだめて落ち着かせる。
「あぁ、もうムカつく!
帰る!!!
虎之助(とらのすけ)(加藤清正の幼名)、部屋で飲み直すぞ」
福島正則は加藤清正を連れて大坂屋敷に帰って行った。

「…何でこうなるのかなぁ…」
秀頼は呟いた。
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