身代わり王女の禁断の恋
「国王陛下のお子様は、フロレンティーナ
王女殿下しかいらっしゃいません。
必然的に時期国王は王女殿下が女王として
立たれます。
しかし、それではおもしろくないのが、国王
陛下の弟君、アルフレート・ハーラルト・
フォン・シュルツ王弟(おうてい)殿下です。」

それって、まさか…

「アルフレート様は、国王陛下の異母弟に
当たられます。
身分低い母親からあらぬ事を吹き込まれて
お育ちになられているので、王位簒奪を
目論んでも不思議ではございません。」

クラウス様は、まるでそれが事実であるかのように語る。

「いくら何でも、そんなこと…
だって、王女殿下の叔父君なんですよね?
そんなことお考えになるでしょうか?」

私には俄かには信じられない話だった。

「失礼ながら、ミュラー男爵家でしたら、
相続争いも起こらないでしょう。
しかし、事は国王の地位です。
これまでも、先代、先先代と王位継承に
おいて、それなりに揉め事はございました。
今回もないとは申せません。」

私は、考えの及ばない世界に、ただ言葉を失い、立ち尽くすしかなかった。

「そこで、クリスティアーネ嬢にお願いが
ございます。」

そうだ! お願い…

「はい。何でしょう?」

「王女殿下が意識を取り戻されるまで、
王女殿下としてこの王宮で生活をして
いただきたいのです。」

今、なんて… ?

私は、言われていることが、よく分からなくて、頭の中で何度も反芻する。

「それって、つまり… 」

「分かりやすく申し上げれば、王女殿下の
身代わりをお願いしたいのです。」

「っ!!
む、無理、無理です。」

いくら顔貌(かおかたち)が似ていても、違う人間。

声も仕草も話し方も違うに決まってる。
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