※彼の愛情表現は、少しだけ重すぎる。


「はのんちゃんがつらいって思うたび、俺がこうしていつだって抱きしめに行くから」

「……なんでそんなに私のことを大切にしてくれるの?」


見返りを求めない愛なんて、そんなのこの世にあるのだろうか。


愛してほしいから、私は友達にも彼氏にも、自分にあげられるものは与えてきた。

だからこそ愛を返してもらえるのだと信じて疑わなかった。


すると、私の頭をそっと撫でながら、ユキが海風に溶かすみたいに穏やかに囁いた。


「こんな可愛いはのんちゃんだから大切にしたいって思うんだよ」

「え?」

「俺が無茶したら叱ってくれるところ、ちゃんといただきますを言うところ、半分こにしてくれるところ、背筋がぴんとしてるところ。そして、誰かのために一生懸命になれるところ。……これ、全部俺がはのんちゃんの好きなところ」

「……っ」

「全然言い足りないけど、はのんちゃんにはこんなに素敵なところがあるんだよ」


どうして気づかなかったんだろう。

こんなにも近くにいたじゃないか。

無償の愛を惜しむことなく向けてくる存在が。


ユキの愛は、なんでか嘘じゃないって信じられる。

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