※彼の愛情表現は、少しだけ重すぎる。
*
『こんばんは』
チャットのメッセージ受信の通知が、暗闇を映していたスマホの待ち受けに表示された。
勉強机に座り、夕食後お風呂にも入らずひとりぼーっとしていた私は、思わず瞬時にスマホを手に取る。
今日ははるくんに後ろめたい気持ちばかりが大きくて、チャットを開く気になれなかった。
けれど、チャットの中で私は〝ひまわり〟なのだ。
ここでなら素直な気持ちで話ができる気がして、些かの重い気持ちを引きずったままチャットを起動させた。
『こんばんは。転校初日、どうだった?』
送信ボタンを押して、そこでふとはっと我にかえる。
私のせいで最悪だっただろうに、自分でもなにを聞いているのだろう。
チャットの中では昼間のことをなかったことにして、いい人のふりをし続けようとしている。
チャットの繋がりを手放す勇気もない。
そんな自分への自己嫌悪に押し潰されそうになって思わず画面を消そうとした時、メッセージを受信した。
『電車の中で女の子に助けてもらっちゃった。不安もあったけど、朝から優しい子に出会えてすごく幸せな一日だったよ(^^)』
「顔文字、笑ってる……」
昨日までは想像することしかできなかったはるくんの笑顔が、今は〝ユキ〟としてリアルに頭に思い浮かぶ。