※彼の愛情表現は、少しだけ重すぎる。
※彼は愛を手加減してくれない。

彷徨う瞳と、見据える瞳







グラウンドの上に広がる空は、どんよりと厚いグレーの雲に一面覆われている。

絶好のマラソン日和というべきなのだろうが、グラウンドに集められ準備体操を行うクラスメイトの顔はみな、空と同様曇り空だ。


「マラソン大会とかだっるー。なんのために走らなきゃいけないのー」

「まじで、マラソン大会はやる意味が分からない……」


不満が飛び交う中、それとは対照的にいつも怠そうな舞香が珍しくやる気に満ちている。


「ぱーっと走って、さっさと終わらせよ」


舞香は小中と陸上部に所属していて、長距離を走ることにはかなりの自信があるらしい。


マラソン大会というシチュエーションにおいても、グループはいつも一緒。

舞香が先頭グループを行くのなら、まわりの私たちも足並み揃えて先頭グループでいなければいけないのだ。


「走るの苦手なんだよなあ」


ユカが隣で小さく呟く。

相槌を選ぶ代わりに小さく苦笑いを返した時、いよいよスタートの合図である空砲の音が鳴り響き、寒空の下、生徒が駆け出した。

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